冷凍機械

冷凍サイクルの仕組みをわかりやすくエアコンで解説

2021-12-13

冷凍サイクル

https://bellspapa.org

冷凍サイクルってどんなものなの?わかりやすい例えで教えてほしいわ。



こんな悩みを解決します。

本記事の内容

今回は身近なエアコンを例にとって冷凍サイクルをわかりやすく解説することで、理解がぐっと深まります。

本記事の内容

  1. 冷凍サイクルとは
  2. 冷凍サイクルをエアコンで解説
  3. 冷凍サイクルの部品を一つずつ解説

 


冷凍サイクルについては次の動画でも解説していますので、良ければ参照してください。

冷凍サイクルは冷凍機械の基礎であり最重要



もし冷凍機械の試験を受けたり、冷凍機の知識を付けたいと考えているなら、冷凍サイクルはこの学問の中で基礎であり、かつ最重要項目の一つです。



なぜなら、主要な構成部品は、このサイクルを成り立たせるために取り付けられており、これがうまく回らないと冷やしたり温めたりすることができないからです。

逆に言えば、冷凍サイクルを理解すると、冷凍機械というものの大まかな流れを理解することができます。

冷凍サイクルは基礎であっても結構複雑で難しいところもありますが、今回はとても分かりやすく例を挙げながら解説していきますので安心してください。

冷凍機械の試験を検討している方は、以下の記事も参考にしてみてください。




冷凍サイクルをわかりやすくエアコンで解説


冷凍サイクルになじみがない場合でも、自分の身近にあるエアコンを例にとるとぐっと身近に感じることができるので、今回はエアコンでわかりやすく解説していきます。

世の中のエアコンのほとんどは冷凍サイクルを回して冷/暖房を行っています。

これが理解できればエアコンの構造もわかるようになり、購入するときの参考になるかもしれません。



サイクルを図で解説



冷凍サイクルは、主に上のような四つの部品(圧縮機・凝縮器・膨張弁・蒸発器)からなり、これらの部品は冷媒配管という管で接続されています。


その配管の中を冷媒という、気体にも液体にも姿を変える物質がくるくると回っています。
この冷媒の循環を冷凍サイクルと言います。


冷凍サイクルでは主に以下の表のように各部品が冷媒の状態を変化させていきます。


温度圧力状態
圧縮機低温 → 高温低圧 → 高圧気体
凝縮器高温 → 中温高圧気体 → 液体
膨張弁高温 → 低温高圧 → 低圧液体 → 気体
蒸発器低温 → 常温付近低圧気体



①から④までの流れで大切になる各部品、それを使って装置内を流れる冷媒について解説していきます。


冷媒



冷媒は、エアコンの冷房で考えると、冷たいものを運び込む物質です。


エアコンから冷たい風が出てくるのは、冷媒が運んできてくれます。

冷媒というのは冷たいものを運び込むことのできる物質の総称で、具体的にはR410AやR32という名前の物質があります。


冷たい風を作りだす原理としては、冷媒の状態変化を利用しています。

状態変化とは、冷媒が液体から気体へ変化したり、逆に気体から液体へ変化することを指します。



よく言う例えでは、消毒のためにアルコールを手に吹きかけますが、このときひんやりひんやりしますよね。

これは液体だから冷たく感じるわけではなく、液体のアルコールが気体へ状態変化するときに、手の熱を奪っているからです。

まさにこの原理を使ってエアコンの冷たい風は作られています。



冷凍サイクルでは、冷媒を液体から気体へ、気体から液体へ状態変化させるループを実現させたものとなります。

それを実現させるのが下の四つの部品となります。



①圧縮機

圧縮機に入る前の冷媒は、圧力が低く、気体状態となっています。この状態の冷媒が圧縮機に入ることで、冷媒は圧力が上昇し、温度が高くなります。イメージ的には温度は70℃~90℃近くまで上昇します。

冷たい風を作り出したいのに、なんでそんなに熱くするんだと思うかもしれませんが、まずは圧縮機で高温高圧にするのです。


圧縮機での変化

状態:気体のまま
温度:常温(15℃) → 高温(70℃)
圧力:低圧圧力 → 高圧圧力


②凝縮器



高温高圧になった冷媒は次に凝縮器に運ばれます。凝縮器はエアコンでは室外機にあたります。



室外機の役割は、高温の冷媒が通っている冷媒配管に、扇風機で外の空気を当てて温度を下げることです。夏場の外気が40℃だとしても、冷媒温度が70℃以上なので冷媒は外気に近くなるまで温度が低下していきます。



室外機から熱い風が出ているのは、冷媒の熱を扇風機の風がもらっているためなんですね。



このとき、冷媒は状態変化を起こします。具体的には、気体でいた冷媒は液体に変化します。



効率的に熱を伝えるには状態変化を起こすのが最もよいことなので、冷媒は気体から液体に姿を変えるのです。



ちなみに、気体→液体に変化するときの熱を“潜熱”といいます。

凝縮器での変化

状態:気体→液体
温度:高温(70℃)→中温(40℃)
圧力:高圧のまま


③膨張弁

温度が外気温度付近まで低下し、液体になった冷媒は、続いて膨張弁に向かいます。



膨張弁では、今までの冷媒配管よりも管が急激に細くなり、少量の冷媒しか通れなくなります。すると、今までの圧力よりも低圧になります。

なぜかというと、今までの道から急激に細い通路になることにより、圧力の低下が生じるからです。

皆さんがランニングをするとき、人通りのまったくない道と、朝の通勤ラッシュのような道を走るのとでは、どちらが早く走れるでしょうか。



この場合は、広々として誰もいない道から、急に狭くて人通りの激しい道を走ることになり、圧力が減少してしまった、というイメージです。



するとこの時、圧力の減少と一緒に、温度も下がり、更には液体のみだったのが気体も混ざる、という変化が生じます。



このときの温度はー10℃とか、とても低い温度まで低下します。これが冷房の風の源になります。


膨張弁での変化

状態:液体→液体+気体
温度:中温(40℃) → 低温(-10℃)
圧力:高圧力 → 低圧力




④蒸発器



蒸発器でいよいよ冷房の風を作り出します。



膨張弁で低圧、低温になった冷媒は最後に蒸発器に送られます。



ここでは、室内の空気を取り込み、冷えた冷媒と熱交換を行います。



部屋の温度が35℃だった場合、35℃の空気の熱を-10℃の冷媒に渡して、代わりに部屋からの空気を設定温度(例えば20℃とか)にして風を送り出します。

このとき熱をもらった冷媒は常温付近まで温度上昇します。圧力は変化しませんが、状態は完全な気体になります。

蒸発器での変化

状態:気体+液体→気体
温度:低温(-10℃)→常温(15℃)
圧力:低圧



以上のような①~④をぐるぐると回すことによって、夏場の暑い部屋を設定温度まで下げることで、僕たちは快適に過ごすことができるのです。


最後に

冒頭でも伝えた通り、冷凍サイクルは冷凍機械の知識、試験においては基礎の部分になります。



一回解説を読んだだけではうまく理解できないかもしれませんので、何度も何度も読んだり、動画を見ることで理解を深めていってください。



最初はイメージだけでもいいので掴んでしまえば、少しずつわかるようになると思います。

  • この記事を書いた人

べる

機械系エンジニア 【経歴】都内の国立大(修士)▶︎一部上場企業▶︎地元の中小企業 【保有資格】第一種冷凍機械責任・甲種危険物・その他 ●2児のパパ・最近ダイエット中