伝熱工学 冷凍機械

熱伝達率・熱伝導率|違いをわかりやすく解説

2021-12-24

熱伝達率(ねつでんたつりつ)って何?どんな時に使うの?熱伝導率(ねつでんどうりつ)と似てるけど何が違うの?


熱伝達率って初めて聞くと、中学の理科で習った「熱伝導率」のことかな、と思いますよね。

そもそも熱伝導率も何だったっけ、ということもあるかと思います。

この記事では以下をイラストで解説します。



今回の内容はこちら!

  1. 熱伝達率の意味
  2. 熱伝導率との違い
  3. 熱伝達・熱伝導を身近な現象で解説





この記事を読むと、熱伝達率と熱伝導率の違いがはっきりと分かるようになります。



更には、冷凍機械責任者、エネルギー管理士、技術士の試験などで熱伝達率を使った問題を解くこともできるようになります。



熱伝達率とは

熱伝達率とは、2つの物体においての熱の伝わり方を表すものです。


ここで重要なのは、2つの物体、ということです。


下の絵のような条件を考えます。

固体の壁があったとします。


この壁は奥の青い流体と接していて、接している面積を\(A[m^{2}]\)とし、壁と流体の温度差を\(ΔT[℃]\)とします。


この壁から\(\phi[kW]\)だけ熱が伝わったとすると、 伝熱量と熱伝達率\(\alpha\)を表す式は次のように表されます。

$$\phi=\alpha AΔT \tag{1} $$ 
これを熱伝達率である\(α\)の形で表現すると以下のような式になります。

$$ \alpha=\frac{\phi}{AΔT}\tag{2}$$


このように、壁と流体の間での熱伝達率は、伝熱量の式を、熱伝達率について解くことによって表すことができます。

また、熱伝達率の単位は[\(kW/m^2 \cdot K\)]となっています。

熱伝導率とは何か


熱伝達率は2つの物体の間での熱の伝わりでしたが、熱伝導率は、一つの物体において、熱がどのように伝わっていくかを表すものです。

下の絵を例に考えます。


銅製の円柱の細長い棒があったとします。


この左端を火であぶると、少しずつ熱が右の方へ伝わっていきますよね。


この伝えやすさの指標が熱伝導率となります。

熱伝導率の単位は[\(kW/m \cdot K\)]となり、熱伝達率よりもmが一つ少ないものとなります。


これは、物体と物体の間の熱の伝わりではなく、一つの物体が熱をどのように伝えるか、ということになります。

身近な現象で熱伝達率、熱伝導率を考える


熱伝達率と熱伝導率、2つの定義がわかったところで、次は生活の中でのどんな現象が熱伝達率、熱伝導率にあたるのかを考えてみます。


今回は日本の冬の定番である湯たんぽを例にとって考えます。


冬の夜寝る前に、熱いお湯を入れて布団に入れておくあれですね。


ここには2つの熱の伝わりがあります。

熱伝達

最初はお湯が湯たんぽの内側表面を少しずつ温めていきます。


これは2つの物体、つまりお湯と湯たんぽが関係します。

お湯の熱が湯たんぽに伝わっていくので、熱伝達率でこの現象を考えます。

熱伝導

次は、お湯からもらった熱が、ゆたんぽの内側表面から外側表面に伝わります。


これは1つの物体についての熱の伝わりなので、熱伝導率でこの現象を考えます。


昔のゆたんぽは金属のイメージがありますが、今はプラスチックのものが多いかと思います。


イメージとしてわかるかもしれませんが、材料によって熱の伝わり、つまり熱伝導率は異なります。

金属の方がプラスチックよりも熱伝導率が高いです。

対流熱伝達と熱伝導

熱の伝え方というものは3つに分けることができますが、それは以下のようなものがあります。

熱輻射
対流熱伝達
熱伝導

これら三つの熱の伝え方は、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひごらんください。理解が深まります。



熱輻射

熱輻射は太陽光のように、光や電磁波によって熱を伝える現象です。

僕らが日光を浴びて暖かい(暑い)と感じるのは、空気が暖かい(暑い)からではなく、光が直接熱を伝えているからです。

対流熱伝達

先程から解説している、2つの物体の間での熱の移動を対流熱伝達と呼びます。

この熱の伝え方の際に使用するのが熱伝達率となります。

ゆたんぽでは、熱いお湯の熱が、ゆたんぽの内側表面に熱を伝えていく現象をさします。

熱伝導

こちらも先程解説している、1つの物体の間を熱が移動する現象です。この時に熱伝導率を使用します。

ゆたんぽでいえば、ゆたんぽの材料の内側から外側にじわじわと熱が伝わる現象です。


熱の伝わりには3種類あり、上記に勉強した熱伝達率、熱伝導率はそのうちの2つの現象を表す時に使用するものです。

まとめ

これで熱伝達率、熱伝導率の具体的な違いについて、しっかり理解できたかと思います。


冷凍機械の中では、この熱伝達、熱伝導を使用して熱をやり取りすることが主になります。


実際の冷凍機械の試験では、熱伝導現象(熱の伝わり方)には3つあり、熱輻射、対流熱伝達、熱伝導である、というような問題が出題されます。



熱輻射がどういうものかというのは覚えておいたほうがいいと思います。


それでは今回は以上になります。

お役にたてば幸いです。

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機械系エンジニア 【経歴】都内の国立大(修士)▶︎一部上場企業▶︎地元の中小企業 【保有資格】第一種冷凍機械責任・甲種危険物・その他 ●2児のパパ・最近ダイエット中